
山口市黒川の家(リフォーム)
今回のリフォームでは、押入を挟んで南北に分かれていた和室と洋室を、ひとつの大きな空間へとつなげる工事をさせていただきました。
これまでこの二部屋は、それぞれが独立した部屋として存在していましたが、間に押入があることで視線も動線も分断され、使い方が限られる間取りでした。


個室としては成り立っていても、日々の暮らしの中では「あまり使っていない部屋」になってしまうことは少なくありません。荷物置き場になっていたり、来客時にだけ使う部屋になっていたり、なんとなく存在しているけれど活かしきれていない。そんな空間は、住まいの中に意外と多くあります。
そこで今回は、中央の押入をなくして二部屋を一体化。広く伸びやかな一部屋へと再構成しました。
間取りとしてはシンプルな変化に見えるかもしれませんが、実際にはこの「つなげる」という選択によって、住まいの価値は大きく変わります。

部屋が広くなることで、まず変わるのは使い道の自由度。
たとえば家族が集まるセカンドリビングとして使うこともできますし、将来的には寝室とくつろぎスペースを兼ねた空間としても活用できます。ワークスペースを設けたり、室内干しのしやすい場所として考えたりと、暮らしの変化にあわせて役割を柔軟に変えていけるのも、大空間の魅力です。
今回のリフォームでは、ただ広くしただけではありません。空間の快適性そのものを高めるために、窓・床・壁といった要素を一つひとつ丁寧に見直しています。

まず窓については、補助金を上手に活用しながら、断熱性能の高い樹脂窓を採用しました。住まいの快適さを左右する大きな要素のひとつが窓です。冬の寒さや夏の暑さは、外壁よりも窓から大きく影響を受けます。せっかく部屋をきれいに整えても、窓の性能が低いままだと、冬は冷気を感じやすく、夏は強い日差しや熱気の影響を受けやすくなります。
樹脂窓は、アルミに比べて熱を伝えにくく、室内の温度を安定させやすいのが大きな特長。冬場の窓際のひんやり感がやわらぎ、暖房効率も高まりやすくなります。また、結露の軽減にもつながるため、カビやダニの発生リスクを抑え、住環境の健やかさにも貢献します。見た目の美しさだけではなく、毎日過ごす中で「なんだかこの部屋、居心地がいい」と感じられる背景には、こうした目に見えにくい性能の向上があります。
床には、山口県産杉のフローリングを採用しました。杉の床は、見た目にやわらかな表情があるだけでなく、足ざわりにもあたたかみがあります。無垢の木ならではのやさしさがあり、冬でも冷たさを感じにくく、素足で歩いたときの心地よさが魅力です。木目の豊かさや、一枚一枚異なる表情もまた、既製品にはない住まいの味わいをつくってくれます。

さらに、地元山口県の木材を使うことは、単に素材選びの問題ではなく、この地域の暮らしに合った家づくりを考えることでもあります。
地域で育った木を地域で活かすことは、輸送負荷の軽減や地場産業への貢献にもつながりますし、何より住まいに土地の空気感が宿ります。暮らしの器としての家に、その土地らしさが感じられることは、とても豊かなことだと思います。
壁は、調湿性能の高い珪藻土で仕上げました。

珪藻土は、室内の湿気を吸ったり放出したりしながら、空気感をやさしく整えてくれる素材です。日本の気候は季節によって湿度差が大きく、特に梅雨時期や夏場は、室内のベタつきやにおいが気になることもあります。逆に冬は空気が乾燥しやすく、過ごしにくさにつながることもあります。珪藻土はそうした変化をやわらげ、室内環境を穏やかに保つ助けになってくれます。
また、珪藻土ならではの自然な風合いも魅力です。工業製品のように均一すぎない表情が、空間にやさしさと奥行きを与えてくれます。木の床との相性もよく、全体として落ち着きがありながらも、どこかやわらかい空気をまとった空間に仕上がりました。

このように、今回の工事は「二部屋を一部屋にした」という間取り変更だけではなく、断熱性、調湿性、素材感といった、暮らしの質を支える要素を重ねて整えていったリフォームでもあります。
before①
after①
before②
after②
広さが変わると、暮らし方が変わります。
快適性が変わると、その部屋にいる時間そのものが変わります。
今まで使われていなかった場所が、家の中でいちばん心地よく、いちばん活用される場所へと変わっていく。リフォームの大きな価値は、まさにそこにあると感じます。
住まいは、ただ部屋数があればいいわけではありません。今の暮らしに合っているか、これからの暮らしに寄り添えるかが大切です。
使っていない空間を、必要とされる空間へ。
寒い部屋を、過ごしたくなる部屋へ。
今回のリフォームは、そんな住まいの可能性を改めて感じさせてくれる工事となりました。








