
静寂の表情を纏う家(新築)
山口市八幡馬場に一棟の注文住宅が完成しました。
無彩色の静けさと、自然素材がもつ穏やかな温度。その二つが違和感なく溶け合うと、住まいはこんなにも落ち着いた雰囲気を纏うことをこの家は静かに教えてくれます。
色を強く主張することなく、トーンを抑え、素材の質感そのものが空間を形づくる。そんな世界観を大切にしながらつくり上げたお住まいです。
外観は、落ち着いたトーンでまとめられた端正なフォルム。決して派手ではありませんが、周囲の景色に自然と溶け込みながらも、確かな存在感を放っています。時間が経つほど深みを増し、暮らしとともに味わいを深めてくれることと思います。

室内に足を踏み入れると、その静けさはさらに表情を変えます。
淡いグレートーンを基調とした空間に、木の素材感が柔らかく響き合い、静寂の中に確かな温度を与えてくれます。
また、空間を曖昧に別ける曲線の垂れ壁は奥様のこだわり。
ふわりと弧を描く垂れ壁が、空間に柔らかい陰影と奥行きをつくり出し、直線では得られない“やさしさ”が一瞬で部屋全体の印象を変えてくれます。



ニッチ内にキーコーナーとして役立つパンチングボードを設置。ちょっとした工夫が毎日の生活を、想像以上にスムーズで快適なものにしてくれます。

杉の床が放つ暖かさ、塗り壁が生み出すやわらかな陰影。それらが重なり合い、光の動きまでもがひとつのデザインとして空間に溶け込んでいきます。



特に印象的なのは、時間帯によってまったく違う表情を見せること。
朝の光は淡く空間を満たし、昼は影が素材感を際立たせ、夕方には柔らかなトーンが住まい全体を包み込みます。彩度を抑えた空間だからこそ、光の変化が際立ち、住まいに「静けさのレイヤー」が積み重なっていきます。
また、自然素材をふんだんに取り入れたことで、視覚的な心地よさだけでなく、触れたときの安心感までも実現しています。


木の手触り、塗り壁のわずかな凹凸、床に伝わる柔らかな踏み心地。それらは毎日の暮らしのなかで豊かな体験となり、家に帰るたびに深く息をつきたくなるような安らぎを与えてくれます。
この家づくりのテーマは「無彩色の静けさをまといながら、自然素材が持つ温度を溶け込ませること」
。色で飾り立てるのではなく、素材そのものの力を活かし、余白の美しさを大切にすることでした。どの空間にも無理のない調和があり、視線の流れが自然と整い、暮らしの動線にも静けさが宿る。そんな住まいだからこそ、日常の中にさりげない豊かさを感じられるのだと思います。
間取りについては、家事動線や部屋の用途による仕上げの検討をしっかりと重ねました。




小さなお子様のことを考え「浴室~脱衣室~洗面室~トイレ~ファミリークローゼット」を一直線にレイアウト。
水まわりには水に濡れてもお掃除が簡単な床材で仕上げ、長年に渡る美しさの持続を追求しました。
家とは、その人の価値観や美意識が自然と滲み出る場所。
無彩色の静けさを好まれたお施主様の感性と、自然素材の温もりを大切にする暮らしの姿勢。その二つが見事に重なり合い、この家に「静寂の表情」が生まれました。
“派手さではなく、深みのある美しさを。主張ではなく、余白の豊かさを。”
そんな素敵なお住まいとなりました。








