上棟式に雨が降ると縁起がいい理由
家を建てる際に行われる日本の伝統的な儀式の一つに「上棟式(じょうとうしき)」があります。
上棟式は、家の骨組みが完成し、屋根の一番高い部分である「棟(むね)」を上げる段階で行われる儀式で、この時点まで工事が無事に進んだことへの感謝と、今後の安全な工事、そして家族の繁栄を祈るための行事です。
「棟上げ(むねあげ)」とも呼ばれ、家づくりの大きな節目として昔から行われてきました。
上棟式の意味
上棟式は、建物の無事を願うだけでなく、地域の人々や工事に携わる職人たちとの絆を深める役割も果たしています。
上棟式では、建主が神棚や祭壇を設けてお供え物をし、神々や祖先に感謝を捧げます。また、家が無事に完成し、その後も災害や事故から守られるように祈る場です。
かつては、近隣の人々も招待され、宴が催されることが多く、地域社会とのつながりを強める機会でもありました。
また、上棟式では「棟札(むなふだ)」という木札を用意し、家を守る守護札として屋根裏などに納めます。この棟札には日付や建主、大工の名前が書かれ、家を見守る存在となります。
雨の上棟式が縁起がいい理由
上棟式は、作業効率や安全面からも晴れた日に行えるのがベストなのですが、お施主様のご都合や工程などの兼ね合いもあり、雨天決行する場合も少なからずあります。
雨が降る上棟式がガッカリ、、と思いきや、悪いことばかりではありませんのでご安心を。
上棟式の日に雨が降ると「縁起が良い」と言われています。
①福をもたらす象徴としての雨
雨は昔から「豊作」や「恵み」を象徴するものとされています。水は命の源であり、雨が降ることは、家族の繁栄や幸運を呼び込むとされてきました。特に農業が中心だった時代、雨は作物を育てる大切な要素であり、そのため雨は「恵みの象徴」として尊ばれていました。
②地鎮めとしての雨
雨は、地面を清め、悪いものを洗い流す力があると考えられてきました。雨が降ることで、土地が清められ、家を災害や災厄から守ってくれるという意味合いが込められています。建築が進む過程で、家が悪いものから守られるように祈るため、雨は歓迎されるものとなります。「家事にならない」という言い伝えまであるくらいです。
③木材への良い影響
昔の木造建築では、乾燥しすぎると木材が割れるリスクが高まるため、適度な湿気が求められていました。上棟式の日に雨が降ることで、木材が適度に湿気を帯び、建物が長持ちするとも言われています。こうした実用的な理由からも、雨は縁起が良いと考えられてきたのです。
終わりに
上棟式は、家を建てる過程で非常に重要な儀式であり、家族や地域、職人たちとの絆を深める場でもあります。そして、上棟式の日に雨が降ることは、豊かさや安全、長寿を象徴するものとして、昔から縁起が良いとされてきました。雨が降る上棟式は、家族の繁栄や安全を願う気持ちをさらに強め、家が長く、幸せな暮らしの場となることを祈る瞬間となるでしょう。
家を建てるということは、そこに自らの意思で構造物を生み出し、自然環境に変化を加える行為であることは間違いありません。
そこに家を建て住まう人は、どんな天候であろうとも、自然を受け入れ、自然に感謝する気持ちを忘れてはいけないという先人からの教えなのかもしれません。