
利上げと住まいづくり
2026年6月、日本銀行は政策金利を1.0%へ引き上げました。これは1995年以来、およそ30年ぶりの水準です。

長らく続いた「超低金利時代」が終わりを迎えようとしています。
住宅業界に身を置く私たちにとっても、この変化は決して無関係ではありません。むしろ、これからの住まいづくりの考え方そのものを変える大きな転換点になるかもしれないと考えています。
なぜ日銀は利上げを行ったのか
背景にあるのは、物価上昇の定着です。
食品やエネルギー価格の高騰だけでなく、人手不足による人件費上昇、賃上げの広がりなどにより、日本経済は長年続いたデフレからインフレ基調へと移行しています。日銀は「物価上昇率2%」を安定的に達成できる環境が整いつつあると判断し、金融正常化へ舵を切りました。

今後も追加利上げが行われる可能性が指摘されており、住宅ローン金利も緩やかな上昇局面に入ると見られています。
住宅ローンはどうなるのか
特に影響を受けやすいのが変動金利型住宅ローンです。
今回の利上げによって、多くの金融機関では基準金利の引き上げが予想されており、今後借入を行う方だけでなく、すでに住宅ローンを利用されている方にも影響が及ぶ可能性があります。

例えば4,000万円を35年返済で借りた場合、金利が0.5%上昇するだけでも総返済額は数百万円単位で増えることがあります。
もちろん、歴史的に見れば現在の金利水準はまだ低い部類です。しかし、「住宅ローンはとにかく安く借りられる」という時代ではなくなりつつあることは間違いありません。
住宅価格そのものが高くなった
さらに深刻なのは、住宅価格の上昇です。
コロナ禍以降、
木材価格の高騰
ウッドショック
ロシア・ウクライナ情勢による資源価格上昇
円安による輸入資材高
ナフサ価格上昇による建材・断熱材・樹脂製品の値上げ
人手不足による労務費上昇
物流費高騰
などが重なり、建築コストは大きく上昇しました。

建設物価調査会の建築費指数によると、木造住宅の建築費は2015年を100とした場合、2026年には約150まで上昇しています。つまり約1.5倍です。
実際の住宅業界でも、コロナ前には2,000万円台前半で建築できていた住宅が、現在では3,000万円を超えるケースも珍しくありません。
同じ延床面積、同じ性能であっても、建築費は体感として1.3~1.5倍程度になったという声をよく耳にします。
土地価格、住宅ローン金利、建築費。
住まいづくりを取り巻く三つのコストが同時に上昇しているのが今の時代なのです。
これから増える「中古住宅+リノベーション」
こうした状況の中で注目されているのが既存住宅の利活用です。

日本には数多くの住宅ストックがあります。しかし、その多くはまだ十分に活用されているとは言えません。
構造的に問題がなく、適切なメンテナンスや性能向上リノベーションを行えば、これから先も十分に住み続けられる住宅が数多く存在します。
新築住宅が総額5,000万円、6,000万円という時代になれば、「新築一択」ではなく、「良質な中古住宅を購入し、自分たちらしくリノベーションする」という選択肢がますます一般的になっていくことが予測されます。

欧米では中古住宅流通が主流ですが、日本もようやくその流れに近づいてきたように感じています。
賢い住まいづくりとは
もちろん新築には新築の魅力があります。
ゼロから理想を形にできることは大きな価値です。
しかしこれからの時代は、「新築か中古か」ではなく、「資産価値をどう活かすか」という視点も重要になるのではないでしょうか。
中古住宅を購入し、
耐震性能を高める
断熱性能を向上させる
間取りを暮らしに合わせて変える
自然素材を取り入れる
そうしたリノベーションによって、新築同等、あるいはそれ以上の満足度を実現することも十分可能です。
住宅価格が上がり続ける今だからこそ、住まいづくりは「建てる時代」から「活かす時代」へ。
私たちKIZUKIplanningは、ホームインスペクションを活用しながら、建物の価値を正しく見極め、その家が持つ可能性を最大限に引き出す住まいづくりを大切にしています。

これからの賢者の選択は、既存住宅を活かすリノベーションやリフォームかもしれません。
住まいに求めるのは「新しさ」ではなく、「豊かな暮らし」。
そんな時代が、すぐそこまで来ています。








