
お引渡しの日に
先日、新築住宅のお引き渡しをさせていただきました。
お施主さまが新しい暮らしを始める大切な節目に立ち会えることは、私たちにとって何度経験しても特別な瞬間です。
図面上で何度も検討し、現場で細かな納まりを調整しながら形にしていったお住まいが、いよいよご家族の生活の舞台として動き出していく。その瞬間の空気は、どこか張りつめているようでありながら、やわらかな温かさも感じることができます。
お引き渡しの際、お施主さまから「社員のみなさんへ」と、素敵なお菓子と直筆のメッセージカードをいただきました。設計や工務スタッフへのお気持ちが込められた贈り物に感謝しかありません。
さらにその日の夕方には、新居のリビングをお子さまが走り回る動画が届きました。
まだ家具の少ない空間を嬉しそうに駆け回る姿から、新しい住まいがしっかり受け入れられ、家族にとっての“舞台”になり始めていることを感じました。
工事中は静止していた空間に、音が生まれ、動きが生まれ、生活が宿り始める。この瞬間に立ち会えることは、私たちの仕事の醍醐味でもあります。
私たちが大切にしているのは、単なる建物づくりではなく、そこで育まれる「時間」をつくること。小さな子どもの足音が響く床、家族で囲む食卓、季節ごとに違う光が差し込む窓辺。その積み重ねがいつか思い出になり、家が“人生の一部”になっていく。お引き渡しは完成ではなく、その始まりです。だからこそ、完成してからの表情や空気感を、こうして写真や動画で届けていただけることは、私たちにとって何よりの励みになります。
ご家族の暮らしの役に立てている実感を得るたび、「次の一棟も丁寧につくろう」と、背筋が自然と伸びます。建物は目に見えるものですが、そこで生まれる満足や安心感は形として残りません。だからこそ、日々の対話や丁寧な施工を積み重ねることが、結果的に暮らしの質へとつながっていくと考えています。
今回いただいたお言葉やお気遣いを糧に、これからも真摯に家づくりと向き合っていきたいと思います。これから始まる新しい生活が、穏やかで心地よい日々になりますように。私たちもまた、建築を通してご家族の未来をそっと支えられる存在でありたいと願っています。






