ホームインスペクション@山口市下小鯖
大掛かりなリノベーションを検討中のお宅から、「まずは現在の住まいの状態を知りたい」とホームインスペクションのご依頼をいただきました。
リノベーション工事前に住宅診断をすることは非常に賢明な選択。なぜなら、リノベーションは単に「新しくつくり変えること」ではなく、「住まいを本来あるべき姿に回復させること」から始める必要があるからです。
経年とともに失われていく住まいの基本性能
私たちの暮らしを支えてくれる住まいも、人間と同じように年月を重ねることで少しずつ劣化していきます。屋根や外壁は風雨や紫外線で傷み、基礎や柱などの構造部分も長年の荷重や湿気の影響を受けます。また、配管や電気設備といったインフラも、見えない部分で少しずつ劣化しているのが実情です。
こうした経年変化は、日々の生活の中では気づきにくいものです。例えば、「冬になると家の中がやけに寒い」「床がきしむ音が気になる」といった症状が出たとき、私たちは断熱材を追加したり床材を貼り替えたりといった“改善”に目を向けがちです。
しかし、その前にまず確認すべきは「住まいが家としての基本性能をきちんと保っているかどうか」なのです。
性能回復が先、性能向上はそのあと
リノベーションと聞くと、多くの方が「間取りを大胆に変更して開放的にしたい」「断熱材を追加して冬でも暖かい家にしたい」といった夢や希望を思い描かれます。もちろん、そうした“性能向上”や“快適性の追求”はリノベーションの大きな魅力の一つです。
しかし、そこに至る前に大切なのが“性能回復”という考え方です。
もし構造材が劣化していたら、どんなに断熱材を厚くしても長持ちしません。もし雨漏りがある状態で壁紙を貼り替えても、すぐにシミが浮き出てしまいます。つまり、基盤が傷んでいる状態で「上塗り」をしても、家は本当の意味で甦らないのです。
だからこそ、まずはホームインスペクションを通じて現在の住まいのコンディションを把握し、必要な補修や改修を優先的に行うことが欠かせません。そのうえで、断熱強化や間取り変更といった次のステップへと進むことが、長期的に見ても賢明な判断となります。
ホームインスペクションで見えること
ホームインスペクションでは、建物の劣化や不具合の有無をプロの目で診断します。調査項目は多岐にわたり、例えば以下のような内容が含まれます。
基礎や構造部材のひび割れや劣化状況
屋根や外壁の傷みや雨漏りのリスク
床下や天井裏の湿気やカビの有無
給排水管や電気設備の状態
これらは一般の方が日常生活で気づくのは難しい部分です。しかし、リノベーション工事に入る前に把握しておけば、想定外の追加工事を防ぐことができ、結果として工事全体の予算や工期の計画も立てやすくなります。
「必須」と考える理由
私たちは、リノベーション前のホームインスペクションは“必須”だと考えています。それは単なる安心材料ではなく、住まいを未来へとつなぐための「出発点」だからです。
もしインスペクションをせずに工事を進めれば、見えない部分の不具合を見逃し、後々大きなトラブルにつながる可能性があります。逆に、事前に状態を把握していれば、「ここはしっかり直しておこう」「この部分はまだ健全だから予算を別の部分に回そう」といった判断が可能になります。
これは、結果的に住まいの寿命を延ばし、快適性や省エネ性といった“向上”を本当に実感できるリノベーションにつながるのです。
まとめ
リノベーションは単なる模様替えや設備更新ではなく、家の「再生」と「進化」を同時に行う大きなプロジェクトです。その第一歩として、現在の住まいの健康診断=ホームインスペクションを行うことは欠かせません。
性能回復を優先し、そのうえで性能向上へと進む。この順序をしっかりと踏むことで、住まいは新たな命を吹き込まれ、長く安心して暮らせる空間へと生まれ変わります。
これからリノベーションを検討される方には、ぜひ「ホームインスペクション」という考え方を出発点にしていただきたいと思います。